進化論

「進化ってなんなんだろうね」彼女はそう言った。

「私たちはいつ進化するの?何レベルになればいいの?」


「腕が4本になることのように

レベルアップだけでは解決できない問題もあると思うよ」

僕は答えさらに続ける

「でもダーウィンは進化論で身体は突然変異をすることがあると言ったらしいから

脳とかはそのままでも身体の一部は数世代で大きく変化するかもね」


めんどくさがりな彼女は

「ふーん、そんなよくわからない人ことなんて、私バカだからわかんないよ」

と自分で質問していながら聞き流してしまった。

 

 

今より少し前の話

人類はあることに多くの時間を無駄にしてきたらしい。

スマートフォンが発明され

それまでは一部の人間にのみアクセスできた情報を

容易に、瞬時に入手できるようになった頃だ。

これだけを聞くと、それまでの生活より

遥かに効率的になったように思えるのかもしれないけれど

そうもうまくはいかない。


人類は苦しみ続けたのだ、無料アダルトサイトの広告をクリックすることに。

興奮の最中、悪質な広告は

目的の動画を目指し突き進む人々の前に立ちはだかったのである。

連続するポップアップ広告、胡散臭いリンク先に飛ばされ

強いストレスを受けた。

本当に恐ろしい話だ。

 

 

そして、現在、人類は過去に比べ、進化を遂げた。

私達の指はそういった類のサイトの広告を的確に避けることができるようになった。

かつての人類には想像もできないような正確さで、厄介な広告の穴を突き

目的の動画にたどり着くのである。

ほかのところはわからないが現在の人類にはこの指がある

それこそが進化の証明だ。


ただこんなことを彼女に言ってもどうせ興味を示さないだろう。


「進化ってこういうことなのかもね」

僕はそう呟き

そして人類の進化の結晶とも言える指を使って

彼女の繊細な部分を一寸の狂いもなくクリックする。

彼女はかつての無料動画の女性たちと似たような反応をする。